夢を見た。



どこかの小さな村のはずれに、周りを木々に囲まれたこれまた小さな教会があって、そこで執り行われている結婚式に俺は新郎の友人として参列している。

黒い上等なタキシードに身を包んでいるのは、プラチナブロンドと左右で色彩の違う目をもつ男。
隣の新婦は小柄で美しい金髪の女性だった。

ありふれたごく普通の結婚式。

二人の永久の愛の誓いを俺は最前列で見ていて、心から祝福している。
そんな、夢だった。

幸せな気持ちで目覚めた後に気付いた。

新郎は、シャドウだった。

こころより先にからだが気付いていたようで、両目から涙が溢れていたが、それがはたして祝福の涙なのか、いつか彼が俺のそばを離れてしまうかもしれないという恐怖からの涙なのかは、分からなかった。



彼と出会わなければ、そんな未来もあっただろう。
そのかわり、祝福することもない。
違う出会い方をしていたら、こんな未来もあったのだろうか。
…出会ってしまったら、祝福なんてできはしない。
彼の隣にいるのが俺ではない、未来。

考えたくなかった。



でももし、選ばなくてはならないとしたら。



例えば、この国を守るために彼を捨てなければならないときが来てしまったら。
その時俺は…。



扉を開く気配で目が覚めた。
どうやらうたた寝していたらしい。
まぁ時刻は既に深夜を回っているから、うたた寝でなくても構わないのだが。

入って来たシャドウに夢の話をする。

「…という夢を見た」
「夢の中でも寝ていたのか」 呆れ顔をされた気がする。
「いや、問題はそこじゃない。…国と恋人とを天秤にかけるような男でも、いいか?」

彼にしては珍しく鼻で笑って顔を近づけ、触れるほどの距離で囁く。
「夢の中のおまえは随分と器が小さいな。両方取るとは言えないのか」

砂漠の王であることと、彼の恋人であることは、別の話。
果物と虫のどちらが好きかを考えているようなものだ。
夢の中の俺はそこがわかっていないらしい。

「夢では言わない。今 『 俺が 』 言うから」
「…流石だな」
「それとも、あんたを取るって言った方がいいのかな?」
「…決めるのはオレじゃない。だが、オレはおまえが王でなくても構わないし、逆に、国を取ると言ってももっともだと思う」
「そんな…」

あんた自身の気持ちはどうなんだと、俺と居たいと思ってはいないのかと口に出そうとしたのがわかったのか、彼は再び口を開いた。

「だから、おまえが望んでくれるなら、傍に居たいと思っている」

目を閉じたのは、どちらが先だっただろうか。

夢なら、覚めないでくれ。






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