昨晩、早朝から予定が詰まっているから起こしてくれと頼まれた。
だったら控えろ、と言うべきだったのだろうが、どうせこの王は誰かに起こされるまで寝ていたためしがない。
好きにさせることにした。
珈琲の芳香で目覚めると、案の定隣で寝ていたはずの彼は既に起き上がっていて、身支度もほとんど終えていた。
太陽はまだ昇り始めたばかりで、部屋の中は薄暗い。それでもほのかな光を纏って、エドガーのまだ結われていない金髪は輝きを増している。
ベッドの上で、彼が入れた珈琲を受け取り口を付けようとしてやめた。
微かに彼が笑い、部屋の隅のバーカウンターから氷を用意し、口に含んだ。
何をするのかと訝しんでいると軽い力で顎を持ち上げられ、溶けかけた氷を口移しされた。
薄い、珈琲の、味。
再びエドガーは氷を2つ取りカップに入れた。
「濃いめに入れたからな。ちょうどいいはずだ」
そのまま部屋を出ようとした彼を引き止めた。
髪を結わえるリボンはまだ俺の手の中にあったから。
椅子を用意させ、髪をリボンで結んでやる。
振り返り満面の笑みを浮かべた彼の双眸を見つめたまま、カップに口を付けそのままエドガーに含ませた。
「…薄いな」
多分俺は、唇の端だけで笑っていたと思う。
口づけたときの、あのエドガーの表情。
俺だけが知っている。
部屋を出る彼の背中を見送って、氷の溶け切った珈琲を、そっと飲み干した。
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