「何か欲しいものはないのか?」
エドガーの誕生日から数日たったころ、唐突に訊かれた。
「何の話だ?」
近々何かイベントがあるような話は聞いていなし、そもそも物を貰うような理由がない。

「俺の誕生日には、セッツァーから酒と香水、そして、オプションつきのあんたを貰った。
基本的にこんなときはお返しなんかしないんだが、あんたは別だ。ほかの奴ならそいつの誕生日に何か贈るところだが、あんたの誕生日はわからないし、俺だってたまには恋人に何か喜んでもらえるものを贈りたい、って話」

《オプションつき》 のところで満面の笑顔を見せたエドガー。思い出させるな、恥ずかしい。(単にセッツァーがよこした香水をつけて抱かれただけだが)
ひとまず彼の話に納得したので、考えてみる。

「・・・・・・」

欲しいものだって?
衣食住には事足りている。武器防具の類も今の装備に不満はない。
そもそもこの生活すべてがエドガーからの贈り物とは言えないか?
これ以上何を望むというのか。

「ない」
「・・・・・・」

なんとも言えない顔をしたエドガーに続ける。

「俺はこの生活に満足している。すべてお前が与えてくれたものだ。お前さえも俺のものだと思っている。これ以上何も望まない」
「初めて、聞いた・・・」
「何を?」

エドガーが大きく目を開いて、次いで泣きそうな表情を見せる。

「俺が、あんたのものだって」
「・・・気に障ったらすまない」
「そうじゃなくて!」

いきなり抱きしめられて、一瞬息ができなくなる。すぐ近くにエドガーの鼓動を感じて、なんだか、胸の奥が痛い。

「俺があんたのものだって、俺だって思ってる。でも一度だってあんたの口からはっきり聞いたことがない。・・・俺が想っているように、あんたも俺のこと想っていてくれるのか、って、疑ってるみたいで訊けなかった。だから・・・嬉しいんだ」
「・・・そうだな、初めて、言ったな」

耳元でエドガーの笑う気配がする。

「またあんたからの贈り物が増えた。そのうちなにか用意する。期待してろよ」

熱い抱擁が解かれた。
子供のようにはしゃいでいるエドガーがそこにはいた。

「だから何もいらないとさっき・・・」
「いや、時には気持ちを言葉で、それ以上に目に見えるもので表したい。だめか?」
「いや、いいと思うが・・・」

すでに彼は俺への贈り物を考え出したらしい。
これ以上何を言っても彼の気持ちは変わらないだろう。
俺の何気ない一言が彼をここまで楽しそうにさせる。それがなんだか、嬉しい。

以前の俺はこんなことを考えもしなかった。
生まれ変わるというのはこういうことなのだろうか。

「そうだ、これは確約の証だ」

エドガーの熱い手のひらが俺の頬に触れ、新緑の瞳が近づく。
俺は、目を閉じた。

「楽しみにしている」

これ以上何もいらない。
でも、エドガーがくれるなら、どんなものでも欲しい。
長い口付けの間、そんなことばかり考えていた。






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