カプセルコーポレーションに身を寄せるようになり、どのくらい経っただろうか。
ヒルデガーンとの闘いは凄まじかったが、かつてのコナッツ星のように破壊された街も、殺された人々も、ドラゴンボールの力で以前と変わらない姿を取り戻していた。
地球という星での、平穏な日々。
毎日が、色鮮やかに過ぎていく。

トランクスが「一緒に遊ぼう」と言って、手を引っ張ってくる。
が「皆で買い物に行こう」と言って、買い出しのメモをひらひらさせる。
ブルマさんが「ずっとここに住んでいてもいいのに」と言って、少し残念そうな顔をする。
時折やって来る悟空さんが「一緒に修行しようぜ」と言って、組手を求めてくる。

自分が千年前のコナッツ星に帰ることは、心に決めていたことだ。
だからこそ、今のこの時間が尊く感じられるのだろうか。
そんなふうに思いながら毎夜、眠りにつく。
決してもう目覚めることはないと思って永い眠りについたあの時からは、想像もできなかった未来。
毎朝目を開けて、(夢ではないのだ)と安堵する。
そんな日々を繰り返していたある日のことだった。
トランクスと部屋で話をしていると、ノックがあった。
返事の後に入ってきたの手には、盆に載ったケーキが三つ。

「お昼前に、ブルマさんと作っておいたの」、
そう言ってフォークと一緒に俺たちに配ってくれる。
いただきますと同時にトランクスはスポンジとクリームを頬張っていたが、ただ黙ってケーキを見つめている俺に気付くと
「お兄ちゃん、ケーキ嫌い?」と訊ねてくる。

「確か、初めてうちに来た日も食べてなかったよね」
「あ、そうだよね。確かあの時は、トランクスくんとわたしとで、タピオンの分を半分こにしたような……」

言われてみれば、そうだった気もする。
そうして、あの頃はまだ、からは勇者さんと呼ばれていたな、とも思う。
が自分を名で呼んでくれるようになって大分経つことをふと思い、それだけの時間が経過したのだと改めて思う。
思うけれども、
「そうじゃないんだ」、と言いながら、取り敢えず思考を頭の片隅に追いやった。

「あの日は、ブルマさんが食事をたくさん振舞ってくれただろう? あれはただ、腹に余裕がなかっただけなんだ」
「じゃあ、ケーキは嫌いじゃない?」
「ああ。コナッツ星にもある。よく祝いごとの時には食べていたよ。それを思い出していたんだ」

そう伝えると、二人とも安心したように顔を見合わせてにこにこしている。

「良かった、ねえねえ、お兄ちゃんの星のケーキってどんなの? 教えてよ!」
「わたしも聞きたい。どんな種類があるのかなあ」

そう言って話をせがまれる。
互いに少しずつスポンジを崩しながら故郷の話を聞かせてやり、区切りがついたところでふと、二人を見た。
トランクスが最後に残してあった苺を口に入れ、が微笑みながらその口の端についたクリームを拭ってやっている。
そうして彼女も、少し名残惜しそうにしながらも最後のひとかけらを一口。

――幸福な時間だ。そう、ふと思う。
そこにいるのは、ごくふつうに今を生きているトランクスとだ。
この時代のこの星の、この街で生きる人たちの縮図のようだった。
かつては、コナッツ星もそうだった。あの魔導士たちが現れる前までは平和で、争いもなく、誰もが幸せな日々を過ごしていた。
オルゴールの中に封印されてからのことは判らないが、きっと、そんな日々が故郷の星にも戻ったことだろう。

――全ては、繋がっているのだ。そう、ふと思う。
過去も、未来も。……時代や場所も、或いは、そう、世界さえも。全てがきっと、見えない何かで繋がっている。
そうでなければ、俺も、トランクスも、も、今この場所に存在することはなかっただろう。
彼らが生きることは、未来に確実に繋がっていく。
……彼らが、トランクスとが生きていてくれて、本当に良かった。

「お兄ちゃん、フォーク止まってるよ?」
「あ、本当。今日ももしかして、もうお腹いっぱい?」
「いや」、
半分残っていたスポンジにフォークを入れて、残りを口に運ぶ。
「美味しい」
「ほんと?」
「ああ」

言うと、は「良かった」と笑った。
広がる甘味に、(夢ではないのだ)と心から安堵した。






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