(序) 1 ブルマ
過充電、だったのよね。
「ねえママ。アラームが鳴ってるけど、放っておいていいの?」
「今、こっちの手が離せないの。トランクス、悪いけど見てきてくれない?」
「はーいっ」
あたし達の会話は、いつもと何ら変わりないものだったわ。
ベジータと違って、トランクスは時々あたしのことを手伝ってくれるの。本当に時々、だけどね。この日もそう。
丁度あの子がラボに入ってきたところに、あのアラーム音。
それで、あたしはトランクスに「見てきてちょうだい」ってお願いしたの。
……それで、そうそう。過充電だったのよねえ。
何のって、タイムマシンよ。
ほら、未来から来た方の、あたしの息子のトランクス、覚えてるでしょ?
あの子、未来のあたしが作ったタイムマシンに乗って、この時代までやってきたじゃない。
そうねえ、もうあれから何年も経つのよねえ。
あの頃まだ赤ちゃんだったうちのトランクスも、大きくなるはずだわ。あっという間よねえ。
でさ、そのタイムマシンなんだけど。
未来のあたしが作れるなら、あたしにだって作れるはずでしょ?
とはいっても、勿論、すぐにできたわけじゃなかったけど。完成の一歩手前まで漕ぎ着けたのは、本当にごく最近よ。
未来のおっきいトランクスがこっちにいた頃、ある程度は完成品を見せてもらっていたんだもの。
設計自体は、頭の中でバッチリだったわ。
それでも、エネルギーの充填だとか、やっぱり時間は掛かるものなのね。未来では、設備もあまり整っていなかったって聞いてるわ。
向こうのあたしは相当な苦労をして、あれを完成させたんでしょうね。
……どうしてタイムマシンを作ったのか、ですって?
そりゃあ、あんなすごいもの見せられたら、科学者としてジッとしていられないじゃない?
なんてね。本当は、もしかしたら、いつかこの時代でも使う時がくるかもしれないって思ったのよ。
使う必要がなければ、そりゃあ、それに越したことはないけど。
とにかく、そういうわけでタイムマシンは八割方、出来上がっていたの。
……あとの二割?
そこなのよねー。あの段階では、エネルギーを安定させる課題が、まだちょっと残っていたの。
それさえクリアすれば、晴れて完成って言えていたんだけど。
そのテストのうちの一つ、……自動充電のところで、問題が起こっちゃったのよね。
今回の騒動のきっかけはそれ。
ビックリしちゃったわ。まさか、あんなことになるだなんて。
「……ママ、何か見たことないエラー出てるよ」
「本当? ……ちょっと待ってて」
ようやく操作が終わって見に行って、ぎょっとしたわ。
「ホラここ」
「どれどれ……、えっ」
何、この表示。
そう思った瞬間には、ラボ全体に大きな警告音が鳴り響いてたわ。
同時に、噴き出すみたいなエネルギーの波を感じたの。
規模は違っても、孫くんやベジータが戦ってる時みたいな、力の波に似てたかしら。
「きゃああっ」
「ママ!!」
吹き飛ばされそうになったのを、トランクスが咄嗟に助けてくれて、何ともなかったけど。
……ふふ、頼もしくなったわよねえ、あの子ったら。あら、ごめんなさい、これじゃ親バカかしらね。
でもねえ、見ちゃったのよねえ。
空間にぽっかり穴が開いて、そこから誰かが落ちてくるのを。
ちょっとの間、空間が雷みたいに火花散らしてたけど、すぐに閉じちゃったわよ。それで、何事もなかったみたいに静まり返っちゃったけど。
「……ねえ、ママ」
しばらくポカンとしてたトランクスが、やっとこう言ったわ。
「タイムマシンを作ってたのに、なんで女の人が落ちてくるわけ?」
そうしてそこには、あなたがいたってわけ。ちゃん。
……あれね。時空空間移動のためのエネルギーが、必要相当以上に蓄えられたせいで起こったみたい。本当なら起こり得ない事象よ。
だって、時空空間じゃなくて、まったく別の次元に穴を開けちゃったんだもの。あたしだってビックリよ。
何より、あなたがこの世界のことを、丸ごと全部知ってる子だなんて、ね。
▲NOVEL TOP
NEXT→