正直言って、顔色が悪い。
手鏡に映るまぶたの、何て重たそうなことか。
何より、目の焦点が我ながら怪しい。自分の顔にげんなりして、すぐに鏡をしまった。
仕方がなかった。本当なら早く寝ようと思っていたのに、ボロミアさんが悪酔いしてくれたおかげでいろいろと、その、とにかく寝付けなくなってしまったのだから。
横になって目は閉じていたものの、結局午前の三時くらいまで眠れなかった。
それから少しうとうとして、せいぜい数時間ほど微睡んで。そして今、気だるい身体を起こしたところである。

(こんなんで、今日一日大丈夫かな……)

わたしは自分自身について少しばかり、心配する。
同時に、ボロミアさんの方こそ大丈夫だろうか、というのを心配した。
二日酔いしてないだろうか、気分は悪くないだろうか、頭痛でどうにかなっていたりはしないだろうか。
それも案じることのひとつだけれど、大体あの人は、夕べのことを覚えているのだろうか。
もしそうなら、どの面下げて朝の挨拶をしたものだろう。
いやいや、もしかしたら、ある程度記憶がとんでしまっているかもしれない、あれだけの量を呑んだのだから。
そう思ってはみるものの、それならそれで、何だか大変に腹立たしい。
わたしはこんなに寝付かれずにいて頭の中はグルグルしていて、体力の回復も中途半端だというのに。
そうだとしたら、どうしてくれようか。

身体も頭の回転も、どうにも調子は今一つだ。
けれど取り敢えず、そんなことを無秩序に考えながらも身支度を整え、部屋を出る。
割とすぐ傍にある、彼に宛がわれた部屋の配置が恨めしい。もう少し離れていた方が良かった、と今ばかりは思う。
その方が、ノックするまでの心構えを持つのに丁度いい距離なのに違いない。
早朝のローハン、ボロミアさんの居る部屋の前で、わたしは地味に長い間、扉を叩くのを躊躇していた。
それでもようやくノックして、すぐに彼の返事があったのには安心した。声の具合も、特に悪そうな感じではない。
事実、少しの間の後に現れたその人は、パッと見には普段と全く変わらない様子だった。昨日のお酒は全然響いていないらしい。
一体どれだけ強いのだ。

「あの……おはようございます」
「……ああ」

ただ何処となく、いつもと違ってぎこちない感じではあった。
何がというと、まあ、態度というか、何というか。

「昨夜はすまない、迷惑を掛けた」
「……それは、どの辺りまで覚えていてのお言葉でしょう」
「…………」

一応訊いておこうと訊ねてみれば、ボロミアさんは都合悪げに困ったような顔をした。
ような、というか、困っているのだろう。目が完全に泳いでいる。
ある程度までは記憶があるらしい。僅かなりとも言葉に詰まっているのを見て、反省の色は見て取れた。
故に、わたしは勘弁してあげることにした。答えを待たずに手を振った。言った。

「ボロミアさん」
「……?」
「次はお酒、控えてくださいね」
「……承知した」

言葉少なに言うその様子がまた、本当に申し訳なさそうな感じだった。
シュンとして、とでも言えばいいんだろうか。まるきり叱られた犬である。
その様に、思わずふき出しそうになる。こっちの寝不足も、まあ、もういいか、なんて思えてきてしまう。
実際にふき出しかけた口を、ボロミアさんにわからないようにそっと押える。
当座、ローハンを発つのに支障はなさそうだ。
わたしはその時になってようやく初めて、夕べ遅くまで続いていた雨の音が止んでいることに気が付いた。
少し冷えた早朝の空気が、音もないまま通路の中にひっそりと佇んでいる。
ローハンの、最後の静かな朝だった。




「どうなさったの? 昨夜は眠れなかったのかしら?」
「もうローハンとお別れだと思うと、寝るのも惜しくって」

会うなりエオウィンさんに心配される程度には、やはり顔色が良くないらしい。
(ということはボロミアさんにもそう見えているんだろうなと思った。敢えてかどうか、彼はそれを訊ねることはなかったけれども)
姫とは笑ってやり過ごしたけれど、実際に出立の時間が近付くにつれ、わたしは少し寂しくなってきた。
もしまたいつか、ここを訪れる機会があればと思う。
その時にはまた、姫達にも会えればと。

館の前には、初めて見る馬が待機していた。
聞けば、ゴンドールを出た時のあの馬は脚の怪我が完治していないという。
それ故、ここで面倒を看てもらえることになったばかりか、代わりの馬まで用意してもらったのだと教えてもらう。
ボロミアさんが御礼を言いながら、見送りに出てきてくれていたエオメルさんらに別れを告げていた。
わたしも彼の後に次いで、この数日間のことへの感謝を伝える。
相変わらずエオメルさんはあまり表情を崩さなかったけれど、それでも黙って肯いてくれた。
「またこの地に立ち寄ることがあれば、またそなたの歌を聴かせてはもらえぬか」、
そう言ってくれたセオドレドさんには勿論の返事をして、わたしは最後に、姫を振り返った。

「エオウィンさん。剣を教えてくださってありがとうございました」
「次にお会いする時には、あなたはもっと腕を上げているのでしょうね。あれ程の優れた剣の師が傍にいらっしゃるのだから」

ボロミアさんを見てそう言い、やわらかに微笑む彼女に、わたしは小さく笑み返した。
次に会う時というのがあればいい。
そう思うけれど、同時に、もうローハンを訪れることはないかもしれないとも思う。
勿論そうでないかもしれないし、そうかもしれない。わたしはいつ、どうなるか解らないという不安が常にあった。
けれどそれは、中つ国に来てからずっとのことだ。わたしはもう一度、姫に向けて笑んだ。

「剣、頑張って練習します。エオウィンさんが吃驚するくらい、強くなってみせますからね!」
「まあ」

それは楽しみと言う姫君は、たぶんわたしが見たうちの一番の笑顔で笑った。
時間は、いつの間にか再びの旅立ちの時を迎えていた。
わたしはいつものように、ボロミアさんに馬上から引き上げてもらって彼の前の方に収まった。
見れば、幾らか雲は残っているものの、その切れ目から陽が覗き始めている。
ここ数日はずっと嵐だったから、最初で最後のローハンでの朝の陽だった。
風が、雨が通り過ぎた後の水の匂いと共に丘を渡っていく。

わたしたちはローハンの人達を振り返った。
別れはもう告げ終えていた。だから、多くの言葉は必要なかった。
お気をつけて、という姫に、わたしはボロミアさんと共に肯いた。出立は、オスギリアスの時のように静かなものだった。
丘を下る最中、首だけを後ろにやって、そっと背後を見やる。
彼らの長い髪が朝風になびき、エオウィン姫の白いローブが緩やかに翻っていた。
まるで何かで観た映画みたいな光景だ、とちらりと思う。
わたしとボロミアさんは、こうしてローハンの地に立ち寄り、そして発った。





嵐が過ぎたばかりの大地はぬかるみも多かったけれど、それもしばらくすれば気にならなくなった。
ローハンを出た次の日には、わたしも体調を取り戻していた。
単に寝不足なだけだったし、それに馬上ではわたしは、ほとんどボロミアさんに身を預けるだけのようなものだ。
然程疲れるわけでもなかった。彼は、そうではないだろうけれど。
だから、休憩を取った時にボロミアさんが、
「剣の稽古をしないか」と口にした時には、少し気後れしてしまったくらいだ。
わたしが沈黙のままに彼を見返すと、ボロミアさんは首を傾げてみせた。

「どうした? 気が進まないか?」
「そうじゃないんですが……ボロミアさん、疲れてませんか? せっかくの休憩なのに、何だか申し訳ない気がして」

剣の練習についてよろしくお願いしますと言ったのは、確かにわたしなんですけれども。
そう思うのに、当のその人はと言えば軽くそれを笑い飛ばしていた。

「私は剣を振るっていた方が落ち着く性分だ。気にすることはない。それに、約束していただろう? 私が剣を指導すると」

さあ、ナイフを抜け、と彼は言った。
言われるままに鞘から短剣を引き抜くけれど、わたしはそれを持ち上げるのがなかなかできずにいた。
いつもより、銀色の刃が重たい。
さも準備運動のように、ボロミアさんは自分の剣を手首のところで一回転させてからわたしを見る。
気乗りしないかのように見えたらしい、彼は表情を少し曇らせるとこちらを覗き込んできた。

の方こそ、疲れているのではないか? 無理をすることはないぞ」

わたしは首を振った。そういうのではなかった。
「ローハンで」
一言口にすると、ボロミアさんは一度瞬いてわたしの次の言葉を待ってくれた。言った。

「エオメルさんに言われたんです。自らの刃を恐れるなって」
「…………」

彼は静かにこちらを見ていた。短く、続けた。

「でも、やっぱりまだ少し、怖いなって」
「……の国では、確か武器を持ち歩くことはないのだったな」
「はい」
「ならば無理はない。扱いに不慣れであれば尚のこと、使い方を誤れば自らを傷つけてしまうだろう。痛みを恐れるのは自然なことだ。だが――」
「それはそれで、構わないんですが……」

わたしはボロミアさんを遮るように、もう一度首を振った。
そうすると、彼の方は不思議そうな表情になった。
実際、間違って自分が傷を負ったりするのは構わないことだったし、ある意味、どうでもよかった。
勿論痛いのは嫌なのだけど、それはともかく。
ボロミアさんが、問うていた。

「なら、何を恐れている?」
「わたしが、間違ってボロミアさんを傷つけたりしないかどうかって。そうなったら、いやだなあって……」

言うと、彼は一瞬わたしが何を言ったのか解らないように再び瞬いた。
ローハンでは、わたしと相対したのはエオウィン姫とであり、彼とはまだそういう意味で向き合ったことはなかった。
あの時は確かにわたし自身、ボロミアさんに直に剣を教えてもらえたなら、と思った。
しかしこうして互いに剣を抜いてみると、もしこの人に傷を与えてしまったらどうしようと、そればかり心配してしまう自分がいる。
ボロミアさんが傷つくことは、わたしにとって怖いことなのだ。
真剣にそう思うのに、けれど彼は、噛み殺すような息を漏らした。笑っているのだ。

「そんなことを恐れているのか?」
「そんなこと、と仰いますか……」
「私がこれまでどれ程の戦いを潜り抜けてきたかを、は知らぬな?」
「だって、万が一ということもあります!」

わたしが両手を握って息巻いても、ボロミアさんは苦笑するばかりだった。

「私も子供の頃、初めて真剣を手に指導を受けた時は、相手に対して同じことを思った。だがここで立ち止まっていては、強くはなれぬぞ」
「はい。でも」、
わたしは彼を見上げた。
「ボロミアさんが痛かったりするのは、わたしも嫌なんです」

ほんの幾ばくか、わたしの主はこちらを見やっていたけれど、すぐにぽんと頭に手を置かれた。口元に笑みを残したまま、
「わかった」、と彼は言った。

「約束しよう、私がと剣を交えても傷付くことは決してないと」
「……本当ですよね?」
「勿論だとも」

碧の色を宿した目が、しっかりこちらを見据えていた。
わたしはようやく刃を持ち上げた。エオウィンさんと対した時も、向こうを傷付けてしまったらどうしようということが怖かった。
それが、相手がボロミアさんだと、殊の外恐ろしかった。
彼らの方がわたしなどとは比べ物にならない程強い上に経験も多く、そうなるはずがないと解っていて尚だ。
わたしは数日前に習った通りの構えをとった。
もし、ということを思うと躊躇いが身を竦ませる。それでも彼は、そうなることはないと約束してくれた。
ボロミアさんが真面目な顔になり、僅かに腰を落とす。わたしはその眼を見つめながら、
「よろしくお願いします」を言った。



時間というものはあっという間だ。
剣の時間も、馬に跨っている時間も、食事の時間も気付けばとうに過ぎ去っていた。
けれど、夜の時間はそうでもないかもしれない。わたしは月明かりが当たるように時計盤を持ち上げた。
腕時計の針は、交代の時まであと十数分を知らせていた。
野宿の夜は、まだ数えるほどしか経験がない。外で就寝するのはひどく新鮮で、最初の日は寝付けないかと思った。
けれど横になってしまえば、思いのほかあっさりと眠ってしまえたりする。
わたしは座り直すと、ボロミアさんの方を見た。彼も座った姿勢のまま目を閉じていた。
順にわたし達は不寝番をしていたのだけれど、ボロミアさんは夜の後半を自ら買って出ている。
わたしが深い夜に目覚めていることのないようにという配慮なのだろう。
けれどこれでは、本当にこの人の気の休まる時がないではないか。それを申し訳なく思う。
せめて時間まで、静かに休んでいてほしい。
わたしは視線を上の方に上げた。夜の雲はほとんどなく、少しだけ欠けた月の他にはたくさんの星が散らばっている。

「あっ」
「どうした」

ごくごく小さな呟きだったのに、その人には聞こえていたらしい。
見れば、ボロミアさんは体勢もそのままに、開いた目でこちらを捉えていた。

「……ごめんなさい、起こしちゃいましたか」
「何、少し前から目は覚めていた」

微かに細まって笑んだその目が、月明かりを受けて透き通った光を湛えているように見えた。
「それで、どうしたんだ」
まだ見張りの交代時間まで間があるというのに、ボロミアさんは再び寝入るでもなく訊ねてくる。
わたしはごくごく簡潔に答えを告げた。

「……星が流れたのを見たんです」
「星が?」
「はい。流れ星です」

それでつい、声を上げてしまって。わたしはそう続けた。
以前にも見たことは何度かあるけれど、今さっき目にしたのは長く大きく尾を引くものだった。
あれ程のものは、なかなかお目にはかかれない。わたしはさっきの答えに、少し付け足しをした。

「それで一応、願い事をと思ったんですが……。思い浮かべた瞬間には消えてしまって。難しいですね、流れ星にお願い事をするのは」
「……流れゆく星に、願いを託すのか?」
「えっ」

訊ねられて、わたしはちょっとボロミアさんを見返してしまった。
向こうはと言えば、小さく首を傾げるように真顔でわたしの方を見ている。

「……流れ星に願い事を三回唱えると、それが叶うって言いませんか?」
「初めて聞く話だ。ニホンでは、そのような言い伝えがあるのか」
「そうですか、もしかしたら日本だけなのかなあ。えーと、そういうふうに言われてます。特に、明確な根拠はないんですが」
「そうか。しかし、実行は難しいようだな」
「そうですよね。今だって、一回でさえ唱えられませんでしたし。三回はちょっと無理ですね」

わたしが首を振ってみせると、それでもボロミアさんは言った。

「しかし思い浮かべることはできたのだろう? ……ああ、ならば私も星が流れるのを見つけたなら、同じように願おう。が早くニホンに戻れるようにと」
「えっ」

わたしが二度目の「えっ」を繰り返していると、彼の方からも疑問符が飛んだ。
「なんだ、何か他のことを願ったのか?」と。
ボロミアさんは、わたしが元の世界への帰還を願ったものと思っていたらしい。
……そう言われてみると、わたしの状況からすれば、そうお祈りするのがふつうなのかもしれない。
残念ながら、わたしが思い浮かべたのは違うことだが。
それを彼も察したのらしい。ふむ、と肯くと、何やら面白そうな顔つきになってわたしの方を見やってくる。

「そうか。には今自分の国に帰ることよりも先に、叶えたいことがあるのだな」
「えー……、はい、まあ、その」
「さて。それというのはどのような願いなのだろうな」

私に教えてはくれまいか、と言って試すように視線を投げ掛けてくる。
……話がおかしな方向に行ってしまった。
わたしはちょっと困ってしまって、そのままボロミアさんを見返す羽目になった。
なのに彼の方はと言えば、ただ揶揄かうような楽しげな顔でわたしを見守っているだけだ。
わたしは口を尖らせて言ってやった。

「そういうのは、人に言ってしまったら叶わなくなっちゃうんですよ?」
「ほう。それも知らなかったな」
「……まあ、これも特に、」
「『 明確な根拠はない 』 、……のか?」
「ちょ、人の台詞取らないでください!」

続けようとした先を彼に言われてしまい、思わずそう言い返してしまった。
わたしの反応が面白かったのらしく、彼は低く声を漏らして笑い始める。
上手く遊ばれたような気がして、わたしは無理矢理に話を打ち切ってしまうことにした。

「もう! じゃあ、この話はこれでお終いですっ、ボロミアさんはあと少し寝ていてください、交代まであと十分ありますから!」
「いや、目が冴えてしまった。私が今から代わる」
「駄目です、ちゃんと時間守ってください!!」

くつくつと笑う彼との問答は、結局押し切られるような形で、結果わたしの残り十分の見張り時間を奪われることになった。
夜という時間が好きだった。
僅かなりとも、こんなふうに他愛無い話を穏やかな夜色の中で、ボロミアさんと交わすことができるからだ。



朝という時間が好きだった。
今日は一日、どんなことが起きるだろうと思うと心の底からワクワクするからだ。
この世界は、わたしをそうさせるものに満ち溢れていた。
目を開けた先、すぐ傍に生い茂る草たちの緑があった。朝露で濡れた雫の下、その茎を蟻が一匹這っている。
大分闇も晴れ始めている、けれどほんの少しばかり朝まで間があるのらしい。目を覚ますのには早かったようだ。
静かに身体を横たえたまま、わたしは目だけを動かして辺りを窺った。
空からは月が姿を消し、緩やかにベールのような雲、その途切れた先に微かな夜の名残があった。
紺色の空、そこに光を残す星がぽつりと一つ。

それを見ながら、ボロミアさんは今何をしているだろう、というのを思った。
もう幾ばくかで、彼はわたしを起こしてくれるだろう。折角早くに目が覚めたのだから、そこを不意打ちして驚かしてみようか。
わたしは目を閉じ直すと、寝返りを打つふりをして彼の方向を向いた。目をそっと開けた。
そのままわたしは、息をすることさえ忘れてしまった。



ボロミアさんは座ったまま、朝がやって来るのを眺めていた。
夜を見送り、次なる時間の訪れを彼はただ、静かに見守っている。
遥か向こうを見るその横顔、その表情を言い表す言葉も浮かばないまま、わたしはただその人を見つめていた。
やがて、新しい朝が舞い降りた。
豊饒の大地や鮮やかに茂る草木に花々。それらへと全く等しく平等に、彼にも太陽が降り注ぐ。
陽の光を浴びたボロミアさんは神々しいまでに凛々しく、美しかった。まるで古代の神話か何かに出てくる勇者のように。
――ああ。それは、その通り。だってボロミアさんは、ゴンドールの勇者なのだから。
勇者は彼の国に救いをもたらし、そしていつか、その地へ還っていくのだろう。



金色の陽光が、朝風に揺れるボロミアさんの茶金髪を眩しく輝かせている。
その光景をそっと見守りながら、わたしは夕べのお願い事――早く、ボロミアさんと共にゴンドールに戻ることができますように――というのを、流れる星もないまま静かに祈った。






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